12月11日の研究会報告と次回研究会について

こんばんは。3年の石原です。

今回の研究会は
川上弘美「天にまします吾らが父ヨ、世界人類ガ、幸福デ、ありますヨウニ」
の読書会を行いました。

・この作品が「文芸春秋」という中高年の男性を主な読書層とする雑誌にのせることの意味とはなんであるのか。
・発表者は物語結末部の主人公の祈りを「自身に対する祈り」として読んだが、題名に「世界人類ガ」とあることには意味があるのか。
・性規範の歴史をたどりながら読んでみてはどうか。
・主人公が告白をしているような語り口であるが、その告白は誰に向かってなされ、そのような語り口にはどのような意味があるのか。
・主人公は関谷君に一体何を求めていたのか。
・「子作り」というセックスの本来の目的が排除されてしまっているのはなぜか。
 (→すでに性と生殖は切り離されているのではないか)
・この物語は自己陶酔の物語で、そもそも分析を無化した作品ではないか。
 (→しかしそれでは川上弘美の思うつぼではないか)
村上春樹『我らの時代のフォークロア』と比較してみるのも面白いのではないか。

などの指摘・意見が出ました。

今回の作品は、男性と女性とで初読の印象に随分と差があったように思われます。
私個人としては、主人公「葉子ちゃん」のぐるぐると止めどない、矛盾を孕んだ思考に共感を得ました。「自分自身でもよく分からない自分」に「正確さ」を与えようとするのではなく、その「分からない」を「分かってほしい」のではないかと思います…。


次回の研究会(12月18日)は文学ゲームを行いたいと思います。
文学作品を題材としたオリジナルのゲームを用意していますので、楽しんでいただければと思います。
特に準備等は必要ありません。
よろしくお願いします。