五月二十五日の研究会報告

はじめまして。三年の宮本です。

 

今回の現代文学研究会では、学部四年生の妹尾さんと山際さんの卒業論文題目発表を行いました。内容と議論は以下の通りです。

 

 

〇妹尾さん:村上春樹の作品に登場する双子について

 

村上春樹の作品に登場する「双子」という存在について、作中における双子の役割と意義について言及していくという主旨の発表でした。先行研究群に挑戦し、新たな視点から村上春樹が「双子」に与えた意味を読み取ろうとする妹尾さんの熱意が伝わる文章となっていました。

 

議論では、

 

「先行研究群を見たとき、それらに妹尾さんが反論できることは何か」

「一般化された「双子」の解釈を、妹尾さんが読み替えることで村上のイメージの進化が得られるか」

「先行研究の背景を特定して論じることで、自論がより補強されるのではないか」

「「双子」という存在をどの視点から(例えば宗教、心理学、民俗学等)検討するのか」

 

等の手厚い議論がされました。

 

 

〇山際さん:「なろう系」の現代サブカルチャー史における意義と変遷

 

ラノベの一ジャンルである「なろう系」が近年隆盛していることに着目し、現代評論やサブカルチャー文化の観点から「なろう系」が求められる意味について考察する内容でした。社会の流れや世論の心象という、広範囲な視点からの論の構築となっていて山際さんの論理が明確化されている発表となっていました。

 

 

議論では

 

「社会的な流れを変えるような事件が、作品に影響を及ぼす例はないのか」

「「なろう系」の今後の変遷に答えはでるのか」

「具体的な作品についての考察は、それ自体を単体として扱うのではなく一般論に例として組み込むべきではないか」

「「なろう系」と他ジャンルの概念を整理して定義を明確化するべきではないか」

 

等の細やかな議論が交わされました。

 

妹尾さんの発表は文学作品を研究する時にどのようなことに着眼すればよいのか、とても参考になりました。山際さんの発表は、多方向から分析して特定の文学ジャンルに求められる意義についての考察が面白く、このような研究方法もあるのかとはっとさせられました。

 

議論内では細かい分析を大きな問題意識で包むという文学研究の進め方を、オムライスに見立てるという斬新な見解が登場しました。以下はレシピです。

 

〈文学研究オムライスのレシピ〉

チキンライスの材料:先行研究の批評、作品の読解といった細かい分析

上にのせる玉子:大きな問題意識、自論の枠組み

 

美味しいかはわかりませんがみなさんもぜひ作ってみてください。フライパンが無くてもできそうです。