5月13日研究会報告

はじめまして!前回に引き続き3年の門家です。

 

だんだんと気温が上がってきて、すれ違う人の服装がばらばらなのをおもしろいなあと思いつつ衣替えのタイミングを探る今日この頃です。

 

 

5月13日研究会報告

 

本田さんによる小川洋子『妊娠カレンダー』の読書会を行いました。『博士の愛した数式』でも知られる作者の芥川賞を受賞した作品集です。

 

今回は表題作の『妊娠カレンダー』について、作品のもつ曖昧さや妹の悪意についてみんなで話し合いました。

 

初読後は周囲を振り回しながら生活する「姉」に対して身勝手な妊婦だなという印象が強かったのですが、話し合いを通じて姉の行動は一般の妊婦によくみられる類のものであること、姉やその夫に対する評価はそもそも主人公のフィルターを通してから下されるものであることから、あくまで客観的なものではなく、主人公の「カレンダー」あるいは「日記」形式の独白に左右されていることに気付かされました。

 

印象的な食事シーンがベッドシーンの代替的描写として用いられているところが吉本ばななの『満月』に共通している、そのようなメタファーは村上春樹の作品にもみられるなどほかの作家、作品との比較も大変興味深かったです。

 

読書会においても指摘されていたように、妹はまだ見ぬ姪を破壊しようと凶行にはしるような、実は登場人物でいちばん狂っているんじゃないかと思われる存在であること、そして姉や夫、その他の人物はその妹の目線を通してしか語られないこと、無意識に妹目線のフィルターをかけられていたことに気付き、作品の不安定さ、曖昧さをあらためて感じ、だからこそいろいろな考察ができるんだなと感動しました。

 

次回5月20日の研究会では、本田さんによる卒業論文の題目発表を行います。