5月17日 研究会

こんばんは。
大野が担当させていただきます。
今回は西沖さんと大野の読書会でした。
二人とも時代を感じさせる本でしたね(*´ω`*)

西沖さん 『文字禍』 中島敦
「文字の霊などというものが、一体、あるものか、どうか。」
ナブ・アヘ・エリバ博士はアシュル・バニ・アパル大王に命じられ、文字の精霊について調査を始めるが、徐々に文字の病気の存在を信じ始める。民衆は文字の霊に捕らわれ、体調を崩しているといった統計を集め、大王に提出するがそのことで、知識人であった大王の逆鱗に触れてしまう。数日後、地震により落ちてきた粘土板に押し潰され、博士は圧死する。

何故精霊の正体が文字でなければならなかったのか。歴史=文字であるのか。様々な意見が飛び交い、唯名論実念論かという議論にまで発展しました。
語り手は何者であるのか、という根本的な意見も出、更なる見解が期待できそうです。

大野 『番号の向こう』 出久根達郎
古本屋を営む主人公に、間違い電話がかかってくるようになる。その声は、二年以上前になくなった屑屋の下井さんにそっくりであった。どことなく教養を感じさせながらも経歴は不明であった下井さんは、ある時病を患い入院する。退院後下井宅に訪れた主人公は、下井さんの生活を垣間見るが、数日後下井が亡くなったことを知る。下井さんの意外な一面を知るも、彼が何者であったのか分からないままの主人公は電話に「あなたは、一体、何者なんですか」と問う。

奥さんの発言に「あの人(傍点)」が使われているのは何故か。何故『電話の向こう』でなく『番号の向こう』なのか。本性の分からない登場人物たちのように、古本も得体のしれないものとして描かれているのではないか。
物語の構造についての指摘もあり、まだまだやるべきことがたくさんみつけられる作品なのだなと、実感しました。

来週の研究会はおやすみですが、研究発表のある人は早め早めの準備に取りかかりましょう!←私