7/12研究会+お知らせ

こんにちは!
はじめにお知らせです。
7月26日の研究会は、映画『キッチン』の鑑賞会を、B102の教室で行います。
よろしくお願いします。


7月12日(金)の研究会は、4年生の石飛さん、赤松さんによる卒論題目発表を行いました。

・石飛さん 
高橋源一郎(副題未定)』

【論旨】
「今までに読んだことのない面白さがある」という高橋源一郎作品を、彼の初期三作品『さようなら、ギャングたち』『虹の彼方に』『ジョン・レノン対火星人』を中心に論じる。高橋源一郎の名前に対する執着心などの、これまでにはない物語の発想に着目し、彼のポストモダン性について当時の時代状況と照らし合わせながら研究していく。

質疑応答では、主に以下のことが挙げられていました。
Q:初期三作品だけの研究で、高橋のテーマ性は見えてくるのか
A:『さようなら、ギャングたち』をはじめとする初期三作品は、当時の文学界に影響を与えたため、この三作品に絞ることにした。また、一作品の読解が難解なため、テクスト精読という意味でもこの三作品を取り扱うことにした。

Q:三島由紀夫賞選評にある、中上健次の「この作品が物語過剰な現代への反(アンチ)」とはどういう意味か。
A:高橋のポストモダン性から、これまでの近代文学に対する挑戦、という意味でとらえた。

Q:作者紹介で挙げられていた「すばらしい日本の戦争」は実際の戦争と関連性があるのか。
A:学生運動の革命・その状況を表した一言のため、実際の戦争との関連性はない。現在。テクストが出回っていないため、研究の対象にはできない。

【講評】有元先生
高橋源一郎のように自作自解のできる作家を評価するのは難しい。彼の作品構成や文学・現代史への関心の深さに注目して、高橋が興味を持っていた文学について調べることでさらに掘り下げた研究ができるのではないか。また、同時代の作家村上春樹(大衆的な作家)と高橋の違いについて触れると面白いだろう。先行研究については、物語論「物語とはなんだろう」という点に注目して、ポストモダンの意味について言及するとよい。

・赤松さん
深沢七郎研究―文体を中心に―(仮)』

【論旨】
作品の作り方に一際強いこだわりを持った深沢七郎を、作品の文体に着目し系統的に分析することで彼の作品の変遷について探っていく。今回の発表では『みちのくの人形たち』を分析例に挙げ、反復の表現が意味するものから作品にどのような効果を与えているのかを考察した。今後は、さらに多くの作品精読や深沢に影響を与えたものへの追体験などを試みる。

質疑応答では、主に以下のことが挙げられました。
Q:深沢の『楢山節考』は作風が谷崎純一郎『春琴抄』と似ているが、他作家の作品との比較・考察は考えているのか。
A:現時点では考えていない。

Q:研究の動機・目的で、「(深沢は)作品の形式を変えていくことに意欲的で、初期と後期の作品では性質が別物」とあるが、これは何かの先行研究に依るのか。
A:自分自身が深沢作品を初期から順に読み、作品のつくりがちがう、と感じた。
→「形式を変えていくことに意欲的〈であると思える〉」などに言い回しを変えてみてはどうか。

Q:三年生の研究発表では村上春樹を選んでいたが、今回深沢七郎研究にシフトしたのはなぜか。
A:陰性の板倉さんに勧められ、読んでみたら思いのほか面白かったため。村上春樹についてはすでに色々と研究されているので、深沢七郎を研究しようと思い至った。

【講評】有元先生
深沢七郎の作品は、これまでの文学作品とは異質であり評価も高い。「文体論」について勉強する、ということだが、文体論と一口に言ってもその定義は研究者によって違う。そのため、文体論のあいまいさを回避するために、自分の考える文体論を作る作業が必要である。また、物語が「いかに作られたか」という観点からも分析を進めていってはどうだろうか。


以上、研究会の内容についてでした。長くなりました。。。
個人的には高橋源一郎さんの『ジョン・レノン対火星人』というタイトルに惹かれたのと、深沢七郎さんの、何やら背筋のぞくっとするような作品たちが気になりました。
石飛さん、赤松さん、発表お疲れさまでした*

3年 加川すみれ